いつか、同じ場所
村山由佳ともみじ
2017年10月放送
うちなぁ、覚えとる。生まれた時のこと。
めっちゃ狭い苦しいところ通り過ぎたら、急に明るなって、誰かが涙声で「よしよし、頑張ったねぇ」と聞こえてん。今やったら分かるわ。あれが母ちゃんやった。
母ちゃんは、うちの母さん猫の手握っておなかさすって、うちら4人姉妹が生まれてくる為のお産婆さんをしてたらしい。
母さん猫の、そのまた母さん猫の代からの付き合いらしいし、まぁ言うたら、うちらの世話をする為の人生… っちゅうことやな。光栄や思わなあかんで。
それから17年、母ちゃんとうちは、ずっと、ずーっと一緒やった。
時々うちを放ったらかして出かけてまうけど、寂しいの我慢して留守番しとったら、あんじょう帰ってきよる。そらそやな、母ちゃんは、うちなしでは行きていかれへんのやもんな。
あのな、ここだけの話やけど、あの人アホやねん。
仕事は、なんや知らん。怪しいことしてはるみたいやけど、男見る目ぇはさらに怪しいねん。
ちょっとどうか思うくらい。これほんまの話。
うち、ぜーんぶ見てきてんで。
今までのかあちゃんの、あれやこれや。ぜーんぶ。
いろんなんがおったけど、どうせまたあかんのんちゃうかなぁ思て見てたら、きっちりあかんようになりよる。よういわんわ。
それでいくと、今のんはまぁ、なんぼかましな方なんちゃう。なんせ、幼馴染みやもん。よう知らんけど。
当然のこっちゃけど、一番にうちを、二番目に母ちゃんを大事にしよるし、うちのごはんは自分のエサより先に用意しよるし、うんこの片付けもサボりよらん。
せやからうち、生まれて初めて呼んだることにしてん。
「父ちゃーん」ちゅうてな。
ええか、うちの父ちゃんやで。これ泣いて喜ばなあかんで。
今はもう、外へ出る気せぇへん。
たまにベッドに飛び乗ろうとして失敗すると、かあちゃんは見んフリしといてくれるけど、悲しそうな顔なん。勘弁して欲しいわ。
うちまだ大丈夫やし、ピッチピチのセブンティーンやし。
けどなんやろ、めっちゃ眠いねん。
とろとろとろとろ寝てしもうて、気ぃ付いたら一日が終わったあとやねん。
もしかして、最期の日もこんな風なんかなぁ。
とろとろとろとろ寝てしもうて、気ぃ付いたら全部が終わったあとやったり、すんのかなあ…
な〜んも怖いことはないねんで。
みんないつかは同じ所に行くねんし。
行った先で、それこそ留守番するみたいに待っとったら、そのうち母ちゃんも父ちゃんも来よるやろ。そらそやな。二人とも、うちなしでは生きていかれへんねんもんな。
なぁ母ちゃん、いっつもうちに聞くやん。
あんた、母ちゃんとこきて幸せやった? て。
うちには、幸せって、よう分からん。
けどこれだけは分かるで。
母ちゃんはこの世で一番うちのことが好き。
うちはこの世で一番、母ちゃんのことが好き。
相思相愛や。 ええやろ? な。
「あんた、母ちゃんとこきて幸せやった?」のとこで、いつも涙腺が緩みます(;へ:) そして、涙の前に鼻水が湧き出します(-_-;)
でも、とても大きなお家で暮らせて(しかも自然いっぱいの環境で)、もみじさん、幸せなねこさんだと思います!
ネコメンタリーは、とても素敵な、心温まる大好きな2番組です。最初は文章だけの掲載にしようかと思っていましたが、猫ずきの方の心に、より沁みるように(テレビを見ていない方に興味を持っていただけるよに)、画面のねこさんをスマホで撮影。画像をアート風加工させていただきました。